"元"城崎温泉の板長が語る、スーパーのかにと地元「津居山かに」の違い
津居山がに、関西圏では有名なかにですが、
1杯あたりの値段も高く、旬の食材としては高価な部類に入ります。
ちなみに、かにが生きている場合1匹と数えますが、市場に出ると1杯になります。
また、甲羅が丸く容器のような形をしているために、アワビと同じように1杯と数えるというように諸説があります。
スーパーに並ぶ鮮魚コーナーのかにはなぜ安い?
かにの値段ですが、スーパーなどの店頭のかにとの価格差をいわれることもありますが、それにはしっかりとした理由があります。
その理由を聞いてもらえれば、なぜ値段が高いのか納得していただけると思います。
まず、スーパーのかにですが、かにを獲るなかで死んでしまったり、沖じめという形で帰港し、
そのかにが並ぶため鮮度や味の面から値段はどうしても低くなります。
ただ、この手にとりやすい値段のなかでも、津居山かにの美味しさをしってもらいたい、
多くの方に口にしてもらいたいとい地元漁業に関わる方々の気持ちの表れでもあります。
一方、生きたまま帰港し、加工場でしめた場合、
鮮度が保たれているので味の面からも値段はどうしても高くなってしまいます。
絹のような繊維を持つ新鮮な津居山かにの美味しい食べ方
その鮮度が一番わかりやすい調理法として、かに刺しにしたときのピンと張った弾力と、
繊細な絹のような繊維に隠された旨み、これこそが津居山かに本来の特徴といえます。
もうひとつ、津居山かにの鮮度を感じることのできる部分として、旨みのつまったかにみそがあります。
裁きたてでしたら、かにみその滑らかな舌触りと香り、特に新鮮なほど感じるこの香りも隠れた特徴だともいえます。
そういった、漁師の方々の見えない部分の努力もあり、鮮度、旨み、見栄えとそろった、かにが津居山港の直売所には並びますが、
お客さまには見えない部分なのでどうしても値段が高く感じてしまいます。
津居山かにと柴山がにの漁業の違い
この津居山かにですが、近くに柴山漁港という港があり、ブランドがにの柴山かにがあります。
先ほども話しました鮮度にも関わることなのですが、漁場の場所にも大きな違いがあります。
津居山かには、日帰り操業という漁業が中心になります。
日帰り操業とは、簡単にいえば、夜出港して朝には帰る漁の仕方で、
たくさん獲ることはできませんが鮮度がよく活きもよい状態を保つことができます。
また、水温が非常に暖かい、近海のかにの餌が豊富に生息している漁場ですので、
同じブランドの松葉かにの中でも人気がある秘密がこの部分にあります。
もうひとつの柴山漁港で獲れる柴山かにですが、
津居山かにとの大きな違いは、漁場まで12時間かかり、一度漁にでると5日から7日操業するため、
活きた松葉かにを水揚げすることが難しく、鮮度という面ではどうしても劣っていたのですが、
近年では水温を2度前後に調整し、漁獲した松葉かにを活かして港まで運ぶなどして、津居山かにの人気に並ぶほどになっています。
鮮度を重視した津居山がにへのこだわり
漁業関係者の見えないもうひとつの努力のとして、水槽の海水へのこだわりがあります。
この海水ですが、漁港入り口の灯台付近の海水を使用し、赤外線殺菌装置と冷却装置を循環させたもので、
松葉かにの体表に傷があると雑菌が入ることもあるため、完全管理した海水でその心配を減らし、
買われるお客さまに安心安全を提供することで、漁業関係者が一丸となりブランドであることの価値を維持されています。
その現れが、かにについているタグにも見受けられます。
目にみえる安心として、津居山かにには青色タグがつけられています。
そのタグには、水揚げされた漁港、漁船の名前が入っており、これが産地の証明となっています。
しかし、近年は水揚げ量が減り、それに伴い漁港に所属する漁船の数も減っています。
そのため、年々高価な食材となっていますが、かにの選別は全て1匹1匹、プロが目を通して丁寧に仕分けされていますし、
その後のタグ付けも全て手作業でされ、かにへの情熱と熱意が感じられる光景だと思います。
価格に見合うブランドとして、機械作業にせず、全てを手作業でプロが目を通すことによって、
お客さまに満足いただける津居山かにを提供できていると思いますし、この一貫した管理体制こそが、
同じ松葉かにでも津居山かにとしてのブランドになる理由です。